私は、日本から招聘されてやってきたボランティア職員で、別にウズベキスタンのあら捜しをしに来たわけじゃない。だから、多少の嫌なことには目をつむるつもりで日々やっている。なるべく、人のことを憎んだりせずにおおらかな心でやって行こうとしている。それでも、どうしても生理的に合わない、神経を逆撫でするような人物はいるし、正直言って、苦手なタイプの人はいる。なるべくそういう人とは距離を置きたいと思っているものの、たまたまそういう人とパートナ関係にならざるを得なくなることもある。
なりゆきでプロジェクト関連で私が外出する際に同行することになっているのが、A君で、彼はまさにそういうタイプ。
今週、プロジェクトの計画に少々変更があった。こちらのビジネスの進め方なので、なにかとつけたし、つけたし、になることはままある。
そうなると、今の機器の実装だとうまく動作しないっていうことになり、少し、実装を変更することにした。問題点の部分だけはA君に伝えて、一日かけて回避策(プランB、みたいなもの)を考えておいた。
昨日、A君が、「そういえば、この前言っていた問題はどうするんだ?」と聞いてきた。
「セッションのリミットを越えてしまうので、あそことあそこはルーターからVPNセッションを張れるように変更しようね」
と答えると、「そういう方法があることをなんでもっと早く教えてくれないんだ。全部の情報をシェアしろよ」という驚きの回答。
早く教えるもなにも、彼は計画段階には参加していない(そもそも、計画の段階で打ち合わせもなにも行われていないのだが)のだし、急遽追加になったせいで、昨日改めて計画の変更を行ってテストもして、その結果を教えているだけなのに、どうして「早く教えてほしかった」などというのか、理解できない。
全部の情報をシェアしろよ、と言われることは、今回が初めてじゃなくて、過去にも私が何か新しいアイデアを出すたびに、私が情報をシェアしていないと私を責める。そんな癖があるみたい。
決定事項、手順などは全部伝えてあるので、それ以上知りたいと言われても、私の中にあるナレッジを全部移植するわけにはいかない。知らないのは、私のせいじゃなくて、責めるべきは自分のスキルの無さだ。
彼は地方の出身で、いかにも男ばっかり7人兄弟の真ん中あたりで育ったタイプらしく、強欲で、理不尽なことも堂々と主張しようとする。それに多弁なので3時間も一緒にいると、頭が痛くなってしまう。
いつから働き始めたのかも知らないけれどいつの間にか来るようになっていたので、大抵がコネで働いている他の職員とは立場が違っていて、コネなし、たぶんアルバイトみたいな立場なのだと思う。専門は英語で、コンピューターは生活のために自分で勉強したり、講座を受けたりしたらしい。
勉強熱心なのは良いけれど、ユーザーサイドの変な裏技みたいなものはよく知っているのに、管理者サイドの知識や基本的な知識が無いので、度々イチから説明しないといけないことになる。挙句、自分が知らないのは棚に上げて、お前が教えないのが悪い、という態度。
そんな彼が、タシケントで生き残るために目をつけたのが、私がやっているプロジェクトの管理者業務で、今私がマネージャーの立場で進めているプロジェクトで、私が帰ったあとには自分がマネージャーに収まろうとしている。そうすれば職場でのプレゼンスがだいぶ上がるし。だから、強引に色々と計画から実装からノウハウを聞き出そうとする。なにかと「教えてもらおう」としているのはそんな背景がある。
で、もうちょっとポライトに聞いてくれればいいものを、乱暴に聞き出そうとするので、私のほうも警戒してしまう。それに、基本的な知識が乏しいので説明しても理解していないときもある。なにより、私はマネージャーなのだから、立場の違いをきちんと理解して欲しい。
私のほうも、別に今帰るわけじゃないから、帰るときに引継ぎをすればいいような事柄まで仔細に知ろうとするのにも、セキュリティレベルが高すぎて、それなりの立場の人にしか教えられないようなことまで、平気で聞き出そうとするのにも、辟易する。そもそも、この人に教えて(全部技術移転して)いいのかどうかも、一度ちゃんと議論する必要があるはず。
とはいえ、他の職員たちは、修士を取るのだとか、自分のビジネスがとか、いろいろ理由をつけて職場に居ないので、プロジェクトを一緒にすすめるのが、英語が話せる彼しかいない。だからなりゆきで、やはり彼に技術移転をするってことになるのだろうなぁ。
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