本日は映画のお話。
1991年に公開されたエドワード・ヤン監督の台湾映画です。
日本では3時間あまりの上映時間で公開されていたそうで、私がレンタルビデオで20年前くらいに見たのもおそらくそのバージョンだったかと思います。
このたび、フィルムから4Kレストアデジタルリマスター(一体それがなんだかいまいち不明ですが)された4時間のバージョンが日本で劇場公開されることになり、新宿武蔵野館へ行ってみました。
映像はレトロな質感ですが、ノイズもなく美しいものでした。14:15に上映開始、18:15に終映。4時間は長い。まるで飛行機の移動のようです。
タイトルからサスペンスドラマを想像しそうですが、中華民国の歴史の教科書のような、1960年代の台北がリアルに描かれており、一方で少年の心情が、当時まだ素人だった張震の驚くべき演技により生生しく描かれています。
わかりやすいストーリーがあるわけではありません。
大陸からの転校生の戸惑い
同学の女子への淡い恋心
幫と呼ばれるギャング同士の抗争
大陸から移民してきた家族の不安
汚職を疑われ失職する父親
賭けビリヤードで借金を作る少年
など、複数のストーリーが同時進行してゆきますが、共通しているのが1960年の台湾の暗さ、不透明な未来に対する不安です。
今の台湾からは想像がつきませんがほんの50数年前の台湾はこんなにも暗く抑圧された雰囲気であったというのがわかります。
主人公の張震は映画の前半では無垢な少年のような顔をしていて、後半では今の彼に通じるような大人の表情を見せ始めます。まだ10代前半で揺れ動く少年の心情を表現していますが、俳優の力量なのか、それとも監督の力量なのか、その後の中華圏に収まらない活躍は皆の知るところですね。
この映画で父役、兄役を演じるのは実の父と兄で、父親はもともと台湾の実力ある俳優だったそうです。やはりぱっと出の素人ではなかったということですね。
もともとディレクターズカットとして公開されたのが3時間版だそうですので、4時間バージョンは同作品の熱烈なファン向けなのだと思います。暗く重い映画なので私には4時間は長かったです。ただし忘れられない映画体験であったことは確かです。
台湾について思うときポップな文化や陽気でおおらかな人々を思いがちですが、この映画で描かれるように大陸で9年も日本と戦って、その後共産党と戦って、敗北した挙句台湾に遷都してきた人々とその子たちの国なのだと時々思い出す必要があります。誰のセリフか覚えていませんが
「日本鬼子(リーベンクイズ=日本人の蔑称ですね)と9年戦って、共産党と戦って」というセリフが一番印象に残っています。
日本の統治だって好意的に捉えている人もいるでしょうが、抗日運動だって起こっているように了承できない人々も当然いたでしょうね。100年も前の話じゃありません。
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