出稼ぎ帰りの男たちは、ホラズム州やナボーイーで徐々に降りて行ったが、一人はこの列車の出発地のサラトフで働いて、これから東部のアンディジョンまで帰るということで、タシケントまで一緒に乗り合わせた。タシケントが近づくと(とはいえまだタシケントまでは2時間以上あったが)、いそいそと着替えて、髭を剃って、服をパリッとしたものに着替えて、香水をつけていた。
「久しぶりに故郷に帰るの、うれしい?」と聞くと、「そりゃーうれしいよ!」と満面の笑みで言った。2歳と5歳の男の子がいるそうだ。見た目は老けてるけどたぶん私より年下だろう。
運よく、出稼ぎ列車に乗り合わせたので、何人かの出稼ぎウズベク人に話を聞いてみたところ、口を揃えてロシアはいいところだ、と言っていた。
旧ソ連諸国からの出稼ぎ労働者というと、報道などを見る限り随分ロシアで酷い扱いをされているようで、不憫だなあと思っていたけれど、実際帰ってきた人たちが口々にお金も稼げるし、いい国だと言っているのなら、それほど酷い生活でもないのかも知れない。
もっともウズベキスタンだけで500万人もの男がロシアに出稼ぎに出ているなら、中央アジアやカフカス人全体で考えたら1000万人は超えるのだろうし、それだけいれば不幸な体験をする人も何人かいるはずで、そういう体験談が誇張されて広まる側面もあるのかな、と考えを改めた。
列車で出会った出稼ぎの男たちは、大概大柄でプロレスラーみたいな体格で、貧弱なスラブ人より力仕事向きだし、彼らの性格は大人しくて、親分の言うことをよく聞くし、それにグループ行動を好み、思いやりがあるので、出稼ぎの労働者のなかでは優秀(ハラショーラボータ)なのだろうな、と思う。
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