信用状(L/C)
貿易取引に重要な役割を持つ信用状。貿易におけるリスク回避にその役割があります。
貿易のリスクとは荷物を送ったのに金が支払われないリスク、またはその逆などです。
ここでは輸出者を「受益者beneficiary」輸入者を「依頼者」、輸出国の銀行を「買取銀行」、輸入国の銀行を「発行銀行」と呼びます。それぞれ、Drawer,Payer,Payee,Draweeという呼び方もします。
また、買取銀行negotiating bankのことを通知銀行advertising bank、確認銀行confirming bankという呼び方もします(後述)。
小まとめ
輸出者=受益者=Drawer
輸出国の銀行=通知銀行、買取銀行、確認銀行=Payee
輸入国の銀行=発行銀行=Drawee
輸入者=依頼者=Payee
信用状の役割
信用状には、発行銀行が、輸出者に対し(ディスクレが無い限り)支払いを確約するという意味がある。つまり、輸出者には未払いのリスクが無くなるということ。また、買取により船積み後すぐに代金が回収できるメリットがある。一方輸入者にとっては、輸出者を拘束できるというメリットがある反面、信用状の作成には担保が必要になるなどのストレスはある。
信用状の統一ルール
ICC(International Chambar of commerce)による、UCP No. 600
おおまかな流れ
①Payerは発行銀行にLC発行依頼をする
②発行されたLCは買取銀行に転送される
③買取銀行はBeneficiaryにLCを通知する
④BeneficiaryはShippingDocument(BL,Invoice,Insurance)とともに、手形を作成する(荷為替手形)
⑤手形は発行銀行に転送される
⑥発行銀行は依頼者に手形を提示する
⑦依頼者は発行銀行に代金を支払う
⑧代金が買取銀行に振替される
流れ with 注意書き
①Payerは発行銀行にLC発行依頼をする
担保と信用が必要
②発行されたLCは買取銀行に転送される
転送方法は三種類(郵送/プレ・アド/フル・ケーブルアドバイス)
③買取銀行はBeneficiaryにLCを通知する
カバーレター、発行銀行への照会、真正性の確認
Beneficiaryはアメンドを行う
④BeneficiaryはShippingDocument(BL,Invoice,Insurance)とともに、手形を作成する(荷為替手形)
SWBの場合には荷落為替手形を作る
買取銀行はディスクレが無いかどうかチェックする
ディスクレがある場合には買取を拒否できる
ディスクレ時の対処方法は三種類(LGネゴ/ケーブルネゴ/BC方式)
⑤手形は発行銀行に転送される
⑥発行銀行は依頼者に手形を提示する
DPとDAがある。明記されていない場合はDPになる。
⑦依頼者は発行銀行に代金を支払う
⑧代金が買取銀行に振替される
信用状の原則
・信用状独立抽象性の原則
信用状は受益者と発行銀行間で取り交わされ、その他の契約(売買契約等)の影響を受けない
・書類取引の原則
書類だけが扱われ、貨物の内容等には関知しない。
この点、問題になる場合がある。積み荷に問題があっても銀行は関知しないため、きちんとした対処が必要。LC上に積み荷に関する条件を記載しても意味が無いため、現地にて検品を行わせること、そして品質証明書を添付させる等書類を用いた条件を記載すること。
・発行銀行が主たる債務者である
・厳格一致の原則
LC条件と船積書類の文句は一字一句同一でないといけない(ディスクレとなる)
対して、実質一致の原則という考え方も存在する。
LCの転送方法
郵送:従来の方式。時間がかかる。
プレ・アド:重要事項だけを先にケーブル転送し、のちに紙を郵送する。原本は紙のほう。
フル・ケーブルアドバイス:ケーブルでドキュメントを転送する。この場合ケーブル分が原本となる。
アメンドの対処方法
Beneficiaryは、契約書とL/C内容を仔細にチェックする。
必要に応じてAmendmentを依頼する。Faxで依頼者へ。
ただし不一致が受益者に不利益でない場合、そのままにしておくことも出来る。
ディスクレ時の対処方法
LGネゴ:Letter of guarantee(Or Letter of indemnity)を買取銀行に差し出すことで、買取してもらう。Like.ダーティBL時
ケーブルネゴ:ディスクレ内容をケーブルで発行銀行に伝え承諾を得たうえで、買取してもらう。
BC方式:買取が行われないまま、荷為替手形が発行銀行に送られ、発行銀行の判断を待つ。(手形が取立て手形扱いとなる)
信用状の種類
Irrevocable Credit(取消不能信用状)
当事者の許可なく内容を変更、取消することができない
この場合の当事者とは、受益者、発行銀行と確認銀行になる
Confirmed Credit(確認信用状)
発行銀行とともに、買取銀行にも支払いの確約を得ている場合
ディスクレがある場合には買取銀行にも買取義務が無くなるので注意
Restricted Credit/Open Credit(買取銀行指定信用状)
買取銀行が指定されている場合
発行銀行が、自行の支店等に買取させる場合に用いる
Restricted指定は、リクエストで外すことができる
Transferable Credit(譲渡可能信用状)
メーカー等の第三者に譲渡が可能な信用状
※注意
第三者に譲渡する場合のリスクとして、第三者と輸入者が直接契約を結んでしまうリスクがある
その場合、LCを渡さずに代金振替依頼書だけを渡すという手段もある
代金振替依頼書による取引の場合、ディスクレ等があれば支払いが不可能なので注意する。
Revolving Credit(回転信用状)
繰り返し使える信用状
条件は、同一商品、同一の取引先、継続した取引があること。
With Recourse Credit(償還請求権付き)
買取銀行による、買い戻し請求に応じなければならない
Without Recourse Credit(償還請求権無し)
買い戻しに応じなくても良い
スタンバイクレジット
昨今のSWB利用するケースにおける決済の場合。
スタンバイクレジットを作成し送る
荷落ち為替手形の作成と送付
船積書類に関しては売主から買主へ直送
という方法が取られる。
スタンバイクレジットの利用例
支店が現地銀行から融資を受ける際、本社の取引銀行から保証状(スタンバイクレジット)を得る。もしも支店の返済が行われなかった場合は、現地銀行は本社の取引銀行へ手形を振り出す。
信用状開設について
・銀行取引約定書
・外国為替取引約定書
・商業信用状約定書
ディスクレ時には、輸入者への事前通知を略して支払い拒絶
貨物受け取り後のディスクレには対応できない、旨が記載される。
が必要。
Consent Letter
輸入地サイドからのアメンドの場合、ConsentLetter「同意書」とともに「信用状変更通知書」を発行銀行、通知銀行経由で受益者へ送る。そのさい受益者が返事をしない場合には、「みなし同意」となる。
荷為替手形買取依頼書(買取手形)
荷為替手形取立依頼書(取立手形)
LC付き手形の買取の際には買取依頼書が、LC無し(DP,DA)の場合の手形発行には取立依頼書が必要。
→用語が異なることに注意。
買取手形=BB手形=Bill Bought
取立手形=BC手形=Bill For collection
名宛人の違い
LC付き手形では、「発行銀行」が名宛人になるが、
LC無し手形では、「輸入者」が名宛人となる。
その他
・ラテンアメリカには信用状制度が無い。