VIDEO 郊外のシネマコンプレックスで1日1回夜の上映、それでも上映してくれるだけマシなのでしょうか。客はソロ客4名でした。いずれも30~40代とおぼしき男性2名、女性2名。ちょっと寂しい。こういう映画をもっと沢山の人が観るようになるといいのに。
それにしても、1800円も払って映画館で映画を見るのは、NETFLIXやアマゾンプライムビデオで自宅で見放題の時代にはすっかり、中流の人のリッチな趣味だなぁと思います。
内容はリッチとは程遠い、労働者階級の貧困と福祉政策にまつわる話。舞台はニューカッスル、出演者の訛りが面白いです。大工として実直に納税して生きてきたダンは、心臓病で働けなくなります。しかしなぜか福祉は生活保護(のようなもの、Employment and Support Allowance )を給付してくれません。
それならと失業保険(のようなもの、Jobseeker's Allowance )を勧められますが、働けないのに週に35時間の求職活動をすることを強要され、さらには履歴書が手書きであったために懲罰として給付資格を失いそうになります。そんな馬鹿な話があるかい、と観客は主人公と一緒になって怒ります。
弱者は悪者ではないのに、行政はあの手この手で福祉を止めようとする。行政側の職員も、べつに悪者じゃなく国の方向性に則り仕事をしているだけなのでしょう。
そして、イギリスってひどい国だなぁ、なんて感想を言うだけじゃもったいない。日本でも、生活保護を受給することをまるで悪いことのように言ったり、落伍者のように扱ったり、ということが起きているようです。それはないんじゃないの?と思わなければなりませんよ。
皮肉なのはこの映画を映画館で観るような人はそこそこお金に余裕があり、いい暮らしをしていて知的な人であろうところ。掲示板などで匿名で生活保護受給者を叩いたり、生活保護をなめるな、と書いたTシャツを作ったりする人々はきっとこの映画を見ていないということ。
一度は引退したケンローチ監督が思わず引退を撤退して撮影した、という事実にただならぬものを感じて劇場に足を運びましたが、実際にただならぬ映画を見ることができました。心にさざ波が起こって正解だと思います。
それにしても旅行で見ることのできる英国は本当に表面だけのもの。英国が好き、なんて気軽には言えなくなりそうです。
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