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若者の間の「分断」

21.11.2012

タシケントに来る前に、外務省の方や協力隊OBのオリエンテーションの中で、"最近は若者のロシア語離れ"が起きている、という話を度々伺いました。私はこの話に興味が沸いて、こちらに来てから若者の民族とか使用言語などを注意して見るようにしていました。

初めは、民族主義的な運動によって旧ソ連のイメージのあるロシア語教育を徐々に減らしつつあるような話かと仮定を立てたのですが、実際に今ロシア語で教育を受けている若者も多く、その仮説はどうも違うみたい、と思い始めました。

私がタシケントに来て5ヶ月で感じたことは、なにより話者別による住み分けがあるのだということです。

分断って何?

ウズベキスタンの公用語は、ウズベク語とカラカルパク語です。しかし、旧ソ連時代からの名残で看板やチラシ等ではロシア語の比率のほうが多く、風景だけ見ているとあんまりウズベクを意識することはありません。人々は、ウズベク語か露語をメイン言語にしており、ウズベク語話者とロシア語話者はそれとなく別々にグループを作っています。大学にはウズベク語のナショナルコースとロシア語のユーロコースがあり、入学時に選択できるそうです。この「それとなく」別々に、住み分けている様子を分断と呼んでみますね。

分断の中身を見てみよう

タシケントの若者を大きく三つのグループに分けてみましょう。

Aグループ
ウズベク語家庭に生まれ、高校・大学までウズベク語教育を受けた若者。
Bグループ
ウズベク語家庭に生まれ、幼稚園~高校・大学までロシア語教育を受けた若者。
Cグループ
ロシア語家庭に生まれ、幼稚園~高校・大学までロシア語教育を受けた若者。
(注:ここには、ロシア人だけでなく高麗人など歴史的にロシア語を話すようになった家庭も含む)

タジク語など、その他の言語を使う家庭もたくさん存在するが、タジク語教育機関はウズベキスタンに存在しないので、A、Bどちらかのグループに属するものとします。

Aグループは、ウズベク語ネイティブで、ロシア語は苦手。全然話せないか、話せても流暢ではない。女子はこのタイプが多い。

Bグループは、家庭がウズベク語なので当然ウズベク語もわかるし、ロシア語で教育を受けているので、ロシア語もわかる。むしろウズベク人だけどロシア語が得意なのはこのグループ。比較的有利なポジションだけど、ひょっとしたらウズベク語でも公文書などになるとあまり理解できないかも。男子が多いのと、教育レベルが高い(家庭環境と教材の豊富さ)。

Cグループは、ロシア語しか解さない。ウズベク語はわかっても片言です。それでも、ソ連からの独立から20年経って、さすがに公用語ではない露語のみを使って生きるのにも限界があるのか、努力でウズベク語を話せるようになっている人々もサービス業等にはいる。

話者別の住み分け

じゃあ次は、利用シーンをグループ分けしてみましょう。

ロシア語だけが使われる場所
・私がよく出入りするIT系展示会、カンファレンス
・おしゃれなレストランやホテル
・ロシア系住人がメインのアパート

ウズベク語だけが使われる場所
・モスクやバザール、結婚式
・ウズベク式レストラン(チョイホナなど)
・マハラ(ウズベク人コミュニティ)周辺

いずれの言語も使われる場所
・大学(全部の大学は露語・ウ語コース併設)
・たぶん殆どの職場

おおまかに、ロシア語ソサエティとウズベクソサエティに分かれていて、それぞれ別の場所にはあまり出入りしないし、出入りしてもよくわかんないっていう現状になっているように思えます。大学も、基本的に露語コースとウ語コースは別なので、それぞれの生徒が混ざることはない。それに、子供の頃から学校も別なら当然付き合うグループも別ってことになりますよね。

インターネットの問題点

インターネットを利用するうえでは、ロシア語を理解するB,Cグループが圧倒的に有利です。なぜならインターネットにはウズベク語ベースの情報は殆どなく、ロシア語がわからないとインタネットリソースが使えない。情報化社会が成熟しつつある現代において、インターネットを利用できないというのは大きく不利です。この言語による分断の問題点があるとすれば、インターネットの利用においてだと考えられます。

家庭内の分断

面白いのは、家庭の中にもこの分断があるっていうことです。男の子と女の子の2人兄弟ならば、男の子はロシア語コース、女の子はウズベク語コースの教育を受けていることがあります。なぜならば、男の子には教材が豊富で将来海外に行っても困らない露語で高い教育を、女の子には、高い教育より結婚などコミュニティ重視のウズベク社会向きウズ語教育というように。日本でも、少し前までは女子に高等教育を施すことは少なかったですが、ウズベキスタンではそのような文化が確かに残っています。

話者分断の今後

日本は、島国ということもありとても画一的な文化で、国内に二言語の話者が共存している風景はありません。しかしここはそシルクロードの真ん中、そんな風に分断が出来てしまっていながら割りと誰も困ってない感じが、とてもウズベクらしいし、きっとこの国は数千年の昔からそうやっていろんな人が住みつつペルシャになったりトルコになったり、モンゴルになったりソ連になったりしながらやって来たので、今までも、そしてこれからも、そんな様子があたりまえなのだと思います。

ロシア語離れは起きているのか?

出発点に戻ってみて、そもそも私が興味を持った若者のロシア語離れという現状が起きているのでしょうか?もしも、過去20年間でBグループが大きく減少し、Aグループに流入している実績があるのなら、たしかにロシア語の衰退というか、若者のロシア語離れという事態になっているのかも。しかし、ナショナルコースとユーロコースの履修人口の推移とか、そういう統計情報が無いので、まだ、わかっていません。私が回りに聞いている限りでは、子供に(特に男の子に)ロシア語教育を施している親はとても多いので、タシケントに限っていえばロシア語離れは起きていないのでは?と思っています。同僚に高等教育の専門家がいるので、今度統計などを尋ねてみて、また改めてエントリーに書きたいと思います。

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自閉な子供→ヒッピー→フリーター→IT会社員→ウズベキスタンで協力隊→無職→近所に就職。今後はたくさん旅をします。ときどき音楽の話題も。

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