っていう歌が昔あった。
その歌の主人公である男は、「ついておいでよ」などと言って駆け落ちを教唆するのだった。
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タシケントでは4月から営業をやめていた酒屋がいくつかあった。今回の酒類販売に関する法令の改正内容は、法科大学の学生によると、
・大学等教育機関や宗教施設から半径500メートル以内での酒屋の営業禁止
・交差点やバス停の近くでの酒屋の営業禁止
・従来18歳未満(以下かもしれない)であった飲酒禁止を21歳未満(以下かもしれない)に引き上げ
というものだったらしく、去年の10月と今年の4月に急に酒屋が店を閉めた理由がほんのりとわかった。
そんなこんなで閉めていた、市街の酒屋が、昨日になってひょっこりと営業していたので、仕事の帰りに寄ってみた。
「久しぶりじゃねえの」
「おうよ、元気かい」
なじみの店員とちょっと言葉を交わした。イスラム世界の酒屋の店員らしく、ちょっと堅気じゃない感じのおっさん(といっても、こちらの人は老けて見えるのでまだ20代だと思う)は、2ヶ月も休んだせいか、顔色がよくなって妙に色気を発揮していた。
「いつから営業してんの?」
「んー、三日目、いや、四日かな」
うちの最寄のスーパーの酒売り場も、どうも昨日あたりから営業しているようなので、一斉にまた営業を始めたのかな。
「ところで、いつ日本に帰省する?」
「夏には一度帰りたいと思ってるけど、フドホフラサ」
「そんなら俺も連れて行ってくれよ、東京に行きたいんだよな」
いや、無理。
矢切の渡しじゃあるまいし、連れて行ってあげる☆といって連れて行けるもんじゃないと思うんだよね、国際関係というのは。それに、その男の名前も素性も知らないわけだし、渡航後の面倒を見たり身分を引き受けたりするわけにはいかない。だってあんた何するかわかんないじゃん(堅気にはとうてい見えないし)。
しかし、やはり国を越えるっていうのは特別なことで、今、日本人にとってはそれは容易いことながら、世界の多くの国の人にとっては、一生国境を越えることなく人生を終えるのだと思うと、自分がいかにも「特別な人間」に見えていて、それにあやかりたい(あわよくばお零れにあずかりたい)と、思う人がいるのも不思議じゃない。
そういう気持ちになったのは初めてではないけれど、比較的、家族と一緒に暮らせればそれで幸せ、と思っている人が多そうなタシケントでそういう気持ちになったのは初めてかも知れない。