隙間から外の光は見えるのに日曜なので一週間分の野菜やたまごを買いにバザールへ。まとまったスムがあったので、珍しく塊肉も買った。
肉1.5キロ、なす、きゅうり、とまと、玉ねぎそれぞれ1キロ、たまご10個、ハーブ類。そしてビール3リットル。10キロ近くになった荷物を下げて、40度の炎天下をえっちらおっちら、歩いて帰ってきた。
アパートについて、エレベーターに乗ろうとするとちょうど、誰かが降りてきたところだった。しかし、ドアが開きかけて開かない。仕方が無いので私も外からドアをこじ開ける手伝いをすると、定員3人のエレベータから5人と子供が一人降りてきた。
ちょっと乗りすぎ。
案の定、エレベーターの箱が5センチくらい沈んだ状態で止まってしまっていて、ドアがうまく開かなかったのもたぶんこのせい(と後で気づく)。
入れ替わりに私が乗り込むと、ボタンも押していないのにガッチャン!とひどい勢いでドアが閉まった。やばい予感。
階数ボタンを押してもビクともしない、ドアは閉じたまま。動かない。
とじこめられた・・・・・・・・
ドアに少し隙間があったのでこじ開けようとしても、5センチくらいしか開かない、ドアがロックされてしまっている様子。たぶん、箱が沈んでいるせい。
異変を感じた、先ほど降りた人のひとりが戻ってきてくれて、その人に5センチの隙間から言った。「動きません、開きません!」。よい人だったので、「今、管理人を呼ぶから待ってて」といって、水をまいていた管理人のおじさんを呼んでくれた。おじさんもドアをバールのようなものでこじ開けようとしてくれたけれど、少しも開かない。そして、携帯で誰かを呼んでいる様子。待つこと10分くらい、誰だかわからないけれど別の男性が、「あと20分でメカニックが来るから待ってろよ」と。
20分か。おしっこを我慢していたり、閉所恐怖症じゃなくて良かった。
3人乗りのエレベーターの中は狭くて、当然、風が通らないので蒸し暑い。汗がだらだらと噴出してくる。閉じ込められた瞬間は焦ったけれど、ここであわててもしょうがないので、床に座り込んでタバコを一本吸った。落ち着こう。
危機管理の観点から、JICAのスタッフの携帯に電話を入れた。もしも長期戦になってしまったら、通訳がわりに来てもらおうかとも思っていた。
外ではおばあちゃんたちがなにやらロシア語で話しているのが聞こえる。
「まあ大変、まあ大変」「男性が閉じ込められているらしいわよ」「あらまあ、暑いのに」「もう助けは呼んだの?」「呼んでいますよ」「マラドイチェロビエク(若い人=私のこと)、大丈夫?今助けを呼んでいるからね、心配しないでね」
不安はあったけれど、外でおばあちゃんが騒いでいてくれているので、少し安心できた。
それから5分くらいして、どうもメカニックらしい若い男性がやってきて、ドアはあっけなく開いた。おもわず、「どうやって開けたの?」と聞くと、エレベーターの箱の上からひょっと男性が顔を出して、ここだよ、と。たぶん二階から入って、箱の上からロックを解除してくれた様子。
外で騒いでいたおばあちゃんは、一階のご婦人だった。ロシア人全般に、なんとなく自分勝手なイメージを持っていた私だけれど、今回の件で心を改めた。ロシア人、いい人!自分勝手だと思っていてごめんなさい!
「あなた何階?」「8階です」「そう、エレベーターは使わないで歩いてお行きなさいよ」
そうだね、また閉じ込められることを思うと、怖くてしばらく使いたくないな。
異国で老朽化したエレベーターに閉じ込められたのは、一言で言うと思ったより不安だった。助けを呼びたいのに、言葉の問題でうまく助けを呼べない不安。エレベータ内に呼び鈴は一応ついているけれど、見るからに壊れていて機能していないし。
今回は日曜の昼間で、人が多く居たからすぐに助けを呼べたけれど、もしも深夜だったり、携帯の電池が切れていたりしたら、どうなっていたかわからない。夏で暑かったけれど、冬のマイナスの気温よりは良かったかもしれない。それから、前の利用者の重量オーバーで変な動きをしていたエレベーターに乗ってしまったのは私のミス。あそこで避けていれば閉じ込められなかったのだ。
とにかく、老朽化したソ連エレベーターには気をつけよう、皆さんも気をつけてください。