ウズベキスタンがソ連邦より独立した翌年の1992年より、ウズベキスタンの公用語はラテン文字表記のウズベク語、ということになっています(Wikipedia調べ)。義務教育においてもラテン文字で国語を教えるようになったはずなので、92年から正確に切り替わったのだとしたら、92年時点で6歳だった子、今の27、28歳くらいに境目があって、それ以前はキリル文字のウズベク語、それ以降はラテン文字のウズベク語で教育を受けているということになると思います。
実際に街の風景を見ていると、ラテン文字よりキリル文字のほうが目立っています。タシケントは、もともとロシア系、ペルシャ系や韓国系、ソ連時代に移住してきたドイツ系やカフカスなど、いろんなルーツの人々が暮らす街で、異なる民族間の共通語としてロシア語が使われているため、お店の看板や広告などはロシア語で書かれている場合が多いです。
街で見かけるウズベク語も、どちらかというと、まだラテン文字よりキリル文字で書かれたものが多いような印象があります。大きな鉄道駅の駅名などはさすがにラテン文字で書かれていますが、その他普段見かける看板などはまだキリル文字で書かれたものが多い印象。
駅名の表示はラテン文字のウズベク語
ラテン文字のウズベク語と英語の看板が並んでいる高校
先日中国の主席が来ウした際の看板、キリル表記のウズベク語
私の住むマハッラ(小規模な集落?)の案内図、キリル文字表記のウズベク語
職場で見かけるタイプされた書類や、手書きのメモなども、多くはロシア語でかかれていますが、ウズベク語もキリル文字で表記されている場合が多く、国語の切り替えっていうのは実際大変なプロジェクトなのだと思います。
今、ウズベキスタンは22歳くらいの若者の人口が一番多いのですが、ラテン文字で国語教育を受けているはずの彼らの手書き文字がラテン文字なのかというと、どうもそういう訳でもないようで、彼らとインターネットや携帯でテキストメッセージをしていると色々とびっくりすることがあります。
ある20代前半の学生は、ときどきこういうメッセージを送ってきます。
йахсимисиз?
正当なウズベク語のキリル文字表記だと、яхшимисиз?と書くのですが、それを知らないので、ラテン文字表記のウズベク語であるYaxshimisiz? をそのままキリル文字に置き換えて書いてしまっています。キリル文字によるウズベク語の正書法を習っていないのですね。それなら変にキリル文字で書かないで、ラテン文字で書いてくればいいのに、と思います。
彼とは、主にロシア語でチャットする機会が多いですが、ロシア語の表記も誤字がひどくて、外国人の私が訂正してあげたくなるレベルです。学校で習っていない耳で覚えたロシア語を無理やりテキストで表記しているのでしょう。だから、たとえばчто と書かないといけないところ、口語のЧо とかЧё と書いたり、勝手に弱音化記号 ミャーフキズナークを省略したりしてしまいます。明らかにロシア語を母語としないウズベク人だけれど主にロシア語で話したがるっていうのもタシケント人らしいと思います。
独立後に教育を受けた世代(今の25歳くらいより下の世代)は、一部のロシア語コースで教育を受けた人を除いて、だいたいロシア語は苦手で、話せてもブロークンな人が多いようです。教育を受けていないのだから当然かもしれません。(逆にソ連時代にウズベク語教育を受けている人のロシア語レベルは総じて高い印象です。なぜなんでしょうね)
スマートフォンではない、普通の携帯電話のSMS機能だとキリル文字が使えないため、強制的にラテン文字表記になります。そういう時に独特の使い方があります。
w はキリル文字のШ
4 はキリル文字のЧ
6 はキリル文字のБ
をそれぞれ意味するようで、それらの混ざったテキストメッセージが来ることがあります。
Taro, Yaxwimisiz? (=yaxshimisiz)
4ar4adim.(=charchadim)
ラテン文字表記の中にキリル文字の代用品が混ざっています。それぞれ、素直にYaxshimisizとかCharchadimと書いてくれたほうが私にはわかりやすいのですが、文字数に制限のあるSMSで文字数を節約するための進化なのかなぁ。
携帯会社からの宣伝やお知らせメール等は、ロシア語とウズベク語の両方が併記されて来ますが、その場合、携帯端末の制限上、どちらもラテン文字で書かれてきます。ところが、ラテン文字で書かれたロシア語というのが、慣れないと全然読めないので、最初は苦労しました。
Vy priobreli GPRS paket 1000 mb.
意味は、Вы приобрели GPRS пакет 1000 mb.(GPRSパケット1000メガバイトが注文されました)
字面が違うだけでこんなにわかりづらい。ВыがVyになった時点で私はギブアップです。
このように、ラテン文字で書かれたロシア語、ウズベク語、キリル文字で書かれたロシア語、ウズベク語がごっちゃに溢れたタシケントです。