2013年の映画「Prisoners(プリズナーズ)」「Enemy(複製された男)」のネタバレを含みます。観ていない方は読まないでください。
映画、『Arrival(邦題:メッセージ)』を観て、Denis Villeneuve(ドゥニヴィノー)監督の映像美とか造形美に惹かれました。Netflixでは2017年9月時点でPrisonersとEnemy(邦題:複製された男)の2作品が公開されています。
Prisonersは、とにかくキャストが豪華で驚き。Jake GyllenhaalとHugh Jackmanだけで2大キャストなのですが、その後映画、テレビで主演作多数のDylan Minnetteやオスカーを獲得したViola Davis,それに実力のあるTerrence Howardと、キャストだけでおなかいっぱい。2時間半におよぶこの映画、ストーリーは二転三転し、いったいどこに着地するのか最後までわからないドキドキがありました。Arrivalでは蛸型エイリアン、Enemyでは蜘蛛と、生物の造形が多数でてくるDenis監督ですが、Prisonersでは蛇が登場します。はじめ、普通のサスペンス映画風でDenis Villeneuveらしさを感じませんでしたが、途中から蛇がたくさん出てきてああ、これだと思いました。Prisonersと複数形なのも、たくさんの誘拐された子供、そして少年院にいたロキ刑事、拉致監禁されるとあるキャラ、など複数の存在を示唆しています。
そして、Prisonersと同年に同じJake Gyllenhaalを主演に撮影されたEnemy。これはすごい。哲学的な映画で、一度観ただけではわからない。私は凡人なので2度見て、さらに誰かが作った解説動画を見たりして、やっと理解に至りました。そういえば、Arrivalもやはり一度観ただけでは本当の意味を理解するのが難しい映画でありました。
繰り返し登場する蜘蛛。気持ち悪いです。蜘蛛は網をめぐらして獲物を逃がさない、主人公をとらえる女たちを象徴しているようです。カナダのオンタリオ州にはMother Spiderというモニュメントがあるそうで、画像検索すると納得がゆきました。この映画の舞台・撮影地もオンタリオ州トロントです。女たち特に母を象徴しているのでしょう。
映画は実母からの電話で始まり、母からの伝言で終わります。そして、妻であるハンナも妊娠中。ふたりの母が終始登場します。主人公は母から逃れようとしているのでしょうか。
冒頭のシーン、授業では独裁者は情報を与えず、快楽を与えることでコントロールしようとする、歴史は繰り返すものである、という内容がリピートされています。これも映画の内容を示唆しているようです。独裁者=母、女であると考えてよさそう。
さえないAdamとやんちゃなAnthonyは別人なのでしょうか。まったく同じ姿をしている、同じように毛が生えていて、同じ傷がある。というのはあり得ないことなので、やはり同一人物が2つに乖離していると私は思いました。Adamが持っていた自撮り写真はHanna とAnthonyのものと同じことからも、別人とは考えづらいです。天然のブルーベリーが好きという点もヒントになります。(Adamは否定するけれど母は即座に否定しました。)
タレント会社の警備員の台詞にも、ヒントがありました。Anthonyは半年の間タレントエージェンシーに現れていない、そして、Hannaは妊娠6ヶ月。この符号は偶然ではないでしょう。
妻が妊娠したことで、自由を奪われると感じたAnthonyは、現実逃避としてAdamの生活をはじめて、愛人を持つようになった。それが無意識下なのでAnthonyもAdamも互いにそうとはわかっていない、という恐ろしい話。
最後には無事にAnthonyが消え、AdamとHannaの生活に戻るのですが、秘密の鍵を手に入れたことでやはり再びAdamの中にAnthonyが現れてくることを、Gyllenhaalの演技が示唆しています。授業で言っていたように、何度も繰り返す、ということでしょう。
ここまで考えるとあのラストシーンも納得いくというもの。一度目の鑑賞ではまったく理解できず、ぽかーんとしてしまいましたが。
なんとも哲学的で、こんな映画はそうそう無いと思わせるものでした。
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